ならずものになろう

少しは教育について話してみたくなりました。書き続けて考え続けてみたい。

ならずものになろう

【書評】人工知能は世界を変えるか。教育を変えるか?

AI

GW前半戦。とりあえず、書店に出かけて行って不安は読まないような本を買い込んでみる。

今回は最近話題のAIについての本を書店のおススメに従って買ってみた。今までAI関係で読んだのは以下の二冊のみ。 

人工知能は人間を超えるか ディープラーニングの先にあるもの (角川EPUB選書)

人工知能は人間を超えるか ディープラーニングの先にあるもの (角川EPUB選書)

 
AIの衝撃 人工知能は人類の敵か (講談社現代新書)

AIの衝撃 人工知能は人類の敵か (講談社現代新書)

 

だから今回紹介する本も内容として正しいかどうかは分からないのだけど、話として面白かったので二冊ほど紹介する。

聖書と重ねてAIを語る

一冊目はAIの歴史とこれからを語る一冊。

人工知能は私たちを滅ぼすのか―――計算機が神になる100年の物語

人工知能は私たちを滅ぼすのか―――計算機が神になる100年の物語

 

この本のコンセプトの面白いところはコンピューターとAIの進展を「聖書」に描かれた世界を手掛かりとして読み解いていこうとしているところだ。

あまり技術的なことには、どうしてもしがない国語科の教員では理解が及ばないことが多いので、チューリングがどうのこうのノイマンがどうのこうのと言われても気づけばスヤスヤと寝ていることが多いのだけど、この本はそれぞれの部を聖書の物語になぞらえて語ろうとしているのが面白い。

例えば

バベルの塔の伝説の舞台であり、古代メソポタミアで栄えた多民族都市バビロンのように、インターネットでは世界中の人が一つのことばでつながることができます。(P.94)

 とクラウドについて説明してみたり

アイフォーンや、その後を追いかけたアンドロイドのスマートフォンは、世界になりをもたらしたのか――それは、私たち人類の大半が、いつでもどこでもクラウドがもたらす賢さにつながるようになってきたことです。それは、ユダヤ人が神の石板*1を通して神と結んだような、クラウドとつながって生きるという契約です。その人々を結びつける力は、アラブの春において見られたように、エジプトのファラオのような抑圧的な支配者を打ち倒す武器*2にもなりました。

とジョブズをモーセに重ねてみたりスマートフォンを「神の石板」と重ねてみたりと、とにかく話が文系にとって馴染みやすい(笑)

さらにAIがこれからどうなるかということについても、同じように聖書やキリスト教の歴史になぞらえて予想を展開している。

読み物として個人的にはとても楽しめました。一応、自分が知っている範囲のことから大きく逸脱しているわけではないので、たぶん知識としてもそれほど的外れではないとは思う。もちろん、こじつけのような話でもあるんですけど、面白ければいいかなぁという印象。餅は餅屋に判断を任せます。

人工知能と教育

人工知能と人間というテーマの本もあったので気軽に手を出してみた。 

人工知能を超える人間の強みとは

人工知能を超える人間の強みとは

 

人工知能についての技術的な説明だとかはほとんどなく、どちらかと言えば教育学分野を引っ張てきた自己啓発的な本だった(とはいっても、理論的な裏付けを大切にして本を書いているので、結構、参考になることは多い?)ので、「うーん…自分には必要なかったかなぁ」とは思ったけど、一点だけ面白かった点があった。

それは、近年の教育改革、つまりアクティブラーニングに関する言及だ。

内容の記述を見ると、実践や研究史を踏まえて何かを提案しようというような考え方ではないが、AIの発達や社会構造の変化から、現状の「一斉授業」の限界性について論じているのは面白かった。これは西川純先生の著書と似たようなテイストだ。 

親なら知っておきたい学歴の経済学

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2020年 激変する大学受験!

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おそらく、著者は西川純先生のことは全く知らないのだと思われるが、提案の方向性がほぼ同じというのは、西川純先生もご自身で発想のヒントにイノベーターの考えを参照していることを述べているが、この本の著者も同じくイノベーターの考えを踏まえて意見を述べたところ、結果的に方向性が似たような提案になったのだろう。

ビジネスや社会の変化におけるイノベーションという発想が教員からは出てきにくく、そんな教員が「一斉授業もいいところがある」と旧態依然と固執しがちなのに対して、ぜんぜん、現場と関係がない人がイノベーションの文脈で教育改革を語った時に、アクティブラーニングの有効性を説明しだすというのは面白いところだ。

ちなみに、この本の著者は教育改革の三つのポイントとして「開放性」「柔軟性」「多様性」を挙げている。

「開放性」とはICT環境の充実などを踏まえてオンラインで学べるということや産学連携などを指している。つまり、教室や学校という枠を取り払うことだ。

「柔軟性」とは人工知能の発達によって個別の子どもに個別の教育ができるようになること。

「多様性」とは多様なカリキュラムやキャリアのありかた、そしてオルタナティブ教育を認めていくこと。

以上の三つは苫野一徳先生の学びの「個別化・協同化・プロジェクト化」とも重なることが多い。 

公教育をイチから考えよう

公教育をイチから考えよう

 

s-locarno.hatenablog.com

一番、改革という言葉にさらされて、子どもたちの変化を身近に感じていながら、学びの「個別化・協同化・プロジェクト化」を「基礎基本だ!」とかたくなに認めない教員が多い現場に対して、現場とは無関係な立場の方が理解を示すというのもなかなか皮肉だ。

もう少し人工知能について勉強します

あまり詳しくないので眉唾物にもひっかかりそうな気がします。

少しずつ話題になっているということもあるので、勉強してみようかと思います。なにか文系の国語科の教員でも読みやすい本があればご紹介ください。

*1:引用者注:「神の石板」はタブレットと呼ばれる。つまり、現代のタブレットは現在の「神の石板」という比喩になっている。

*2:引用者注:モーセの出エジプトをなぞらえている

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