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ならずものになろう

少しは教育について話してみたくなりました。書き続けて考え続けてみたい。

現代文の授業に使えるかも?『いま世界の哲学者が考えていること』

なかなかよい本を見つけた。 

いま世界の哲学者が考えていること

いま世界の哲学者が考えていること

 

何といっても出版元がダイヤモンド社だから、あまり期待しないで手に取ってみたのだけど、結果的にはかなりよい本だったなぁという印象。

現代文の授業のネタにしたり生徒に渡したりする資料としていいかなぁという感触。

いまの世界の問題の見取り図

この本に一番好感が持てるのがそれぞれの問題についてバランスの良い記述がされていることと筆者が必要以上に自分の考えを前面に出すことなく、重要な哲学者たちの論文を引用しつつ、どのようなことが議論になっているのかをレビューしている点だ。

逆に言えば、広く浅く取り扱っている割には、一つ一つを読むのにはそこそこ歯ごたえはある。

また、それぞれの章の問題について、重要な書籍を日本語、英語(未邦訳も含む!)を紹介しており、この本の議論だけでは物足りないと思うのであれば、さらに進んで読書を深めることができる。

丁寧で誠実な仕事

この本が出版に至る経緯については「あとがき」に書かれている。

出版の経緯についていえば…(中略)…たくさんの問題を来られ「哲学者はどう考えるのか」答えて欲しいと依頼されたのですが、実際には少し困ってしまいました。

ある意味で、我々のような普通の人間が哲学者にやってしまいそうなことだ。どうしたら良いか分からないときに、他力本願に答えを出してくれることを期待して、頭の切れる人にアドバイスを求めてしまう。

非常に自分勝手な期待であるのに、その期待に応えるような回答をしてくれないと相手に食って掛かってしまうこともしばしば。だから、答える方からすれば適当にお茶を濁した相手の期待に応えるような答え方をしてもよかったはずだ。

しかし、この本の著者である岡本裕一朗先生はそのような雑な回答はしなった。

私は、個々の問題に対して哲学者の主張をそのまま提示することはせず(できず)、むしろ具体的な問題の意味を考え直す作業をいたしました。これによって、哲学者たちの議論と具体的な問題とがシンクロするようになったと思いますが、その成否については、読者のご判断に委ねたいと思います。 

まさにこのコメントの通り、それぞれの問題について雑な切り貼りをすることなく、丁寧に意味を編みなおしたという本であるように感じます。

現代文の授業で生徒に示せるかも?

そんなわけで、雑な解説や切り貼りの本ではないので、授業で生徒に資料として読ませてみても面白いかなぁと感じる。

踏み込んで、徹底的に論じるという性質のものではないが、その分、ブックガイドまでついているので、興味のある生徒が自分でどんどん踏み込めるような本なのではないかなぁと思う。

また、下世話な話ではあるけど、入試の小論文の主要テーマは押さえられているので、これからまだ小論文をやらなければ……という受験生や来年の受験の高校生は挑戦してみてもいいんじゃないかなぁ。

でも、そんな直接的な役に立つという話というよりは、現代の問題を考えるための入り口として携えるにはいいんじゃないかと思います。

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