ならずものになろう

少しは教育について話してみたくなりました。書き続けて考え続けてみたい。

ならずものになろう

PISAに関する簡単な覚書

今後のための雑記。詳しい話はきっと偉い人がやってくれるでしょう。

なお、よくわからない人がマッチポンプに騒ぐことに対するFAQはちょっと古いけど以下の本を参照にすると「PISAショック」あたりの話を踏まえて書かれているので、よくわかります。 

続・教育言説をどう読むか―教育を語ることばから教育を問いなおす

続・教育言説をどう読むか―教育を語ることばから教育を問いなおす

 

簡単に断っておくと「ゆとりか詰め込みか」という二元論で議論している学力観だとまったくダメな学力観のテストだってことです。

結果に関する情報

やはり、第一には結果資料そのものを見るべきでしょう。

www.nier.go.jp

この資料の「結果概要」を引用しておくと…(http://www.nier.go.jp/kokusai/pisa/pdf/2015/01_point.pdfより)

  • 科学的リテラシー、読解力、数学的リテラシーの各分野において、日本は国際的に見ると引き続き平均得点が高い上位グループに位置している。一方で、前回調査と比較して、読解力の平均得点が有意に低下しているが、これについては、コンピュータ使用型調査への移行の影響などが考えられる。
  • 今回調査の中心分野である科学的リテラシーの平均得点について、三つの科学的能力別に見ると日本は各能力ともに国際的に上位に位置している。
  • 生徒の科学に対する態度については、OECD平均と比較すると肯定的な回答をした生徒の割合が依然として低いものの、例えば自分の将来に理科の学習が役に立つと感じている生徒の割合が2006年に比べると増加するなどの改善が見られた。

国語科としてこれから色々と言われそうなのが「前回調査と比較して、読解力の平均得点が有意に低下している」の部分だろう。

マスコミの反応

案の定というべきか…

www.sankei.com

新井教授は読解力強化に向け、「文学作品の鑑賞に偏っている日本での読解力の定義を、書かれたテキストを理解、利用するといったPISAが求める国際標準の定義に変えていくべきだ」と提言している。

www3.nhk.or.jp

 学力問題に詳しい日本教育大学院大学の北川達夫客員教授は、「日本では読解力というと、子どもたちに文章を読ませてただ自分の意見を発表させるにとどまっている。文章を読んで、こんな意見も成り立ちうる、あんな意見も成り立ちうるなど論理的なプロセスを踏まえて自分の意見を作っていく。そういったプロセスを丁寧に作る教育が必要だ」と分析しています。

どちらも意見としては雑。短い紙面で書かれているので省略もされているんだろうけど…。

少なくとも国語教育に口を出すなら教科書と指導要領くらいは読んでほしい。また、実践についても立場を考えれば知っているでしょう?と思うのだが…。

今回の読解リテラシーに関する得点が有意に下がったことは「CBT」の影響が大きいという話も結構出ている。

ict-enews.net

この辺りは先の産経の記事のように「影響はない」という言い方もできるだろうし、分析のように「影響があるかも」という言い方もできるので、即決で結論は出せないように思う。どちらかというとポジショントークかと…。

あと、この手の「読書」と関連付ける話も。

www.yomiuri.co.jp

文部科学省は「読書量の減少などで、長文に接する機会が減ったことが原因の可能性がある」と分析。

また、読売新聞の本日の朝刊の3面では「月1冊も本を読まない高校生は16年に57.1%に上り、3年連続で増加した」と述べ、あたかも子どもが読書しなくなったからPISAが下がったような書き方をしているのもやや気になるし、かなり偏っている言い方に感じる。

第一に、PISAの調査対象は15歳であって高校生ではないので、高校生の不読率を持ってくるのはおかしい。

また、第二に、この読書に関する数字は以下の資料だが、それを見ればすぐわかることがある。

www.j-sla.or.jp

それは、確かに「三年連続不読率は増加」しているが、高校生の不読率については上下しながらもピーク時よりも減っていることをとらえるべきだということと、もし、今回の調査結果と不読率の関係を見るなら、中学生の不読率を見るべきだ。しかし、中学生の不読率を見ると2000年ごろからグンと下がり、その水準で推移しており、この三年間で大きな違いは出ていない。だから、ちょっとグラフを見るだけでもあたかも「読書をしないから学力が低い」という言い方をすることには不適切さを感じざるを得ない。

どこまで増えるか、なんちゃって教育論

この手のいい加減な話はこれからグッと増えるでしょう。折しも次期指導要領の答申もでますし。

でも、これだけは言わせて。

教員はそれなり考えて仕事しているから、素人が思いつくようなことくらいなら思いついて試しているよ……。

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