ならずものになろう

少しは教育について話してみたくなりました。書き続けて考え続けてみたい。

ならずものになろう

データで教育を読み解く……のは慎重であるべきでは?

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こんな記事を見つけました。

f-sekiya2005.cocolog-nifty.com

日本経済新聞の記事で紹介されている「アクティブ・ラーニングに効果がある」という主張に対して疑問を提示している記事です。

何の効果をねらっての「アクティブ・ラーニング」なのかをはっきりさせた上での調査でないと,本当に学習の質が高まったのか,資質・能力が育成できたのかがわからないまま終わってしまう。

このような主張は妥当なものだと思います。そもそも、日経新聞の出したデータが「教員へのアンケート」で、さらに問い方が「アクティブ・ラーニングを導入した小中高校の教員に成果や授業・生徒の良い変化を感じたことがあるか」というものでである。

これでは、いったい、何の「効果」を測っているのかは分からなくて当然だ。

教育界隈ではこの手の怪しげなデータで教育の効果を語る事例が少なくないのですが、本当にそれって意味のあることなのでしょうか?

「〇〇は学力を上げる」は人気がでるけど…

最近、以下の本が話題になっているそうですね。   

世界に通用する一流の育て方  地方公立校から<塾なしで>ハーバードに現役合格 (SB新書)

世界に通用する一流の育て方 地方公立校から<塾なしで>ハーバードに現役合格 (SB新書)

 

まあ、自分は読む気はないし、レビューを見ればだいたいどんな話か想像もつくので、興味ある人は読んで感想を教えてください。

それよりも個人的に気になるのは、「こうすれば学力が上がる」だとか「〇〇大に入る子どもは〇〇していた」という手の本は定期的に話題になるが、まあ、役に立つことは少ないよね。その手の本を読んで成功したという人の話はほとんど聞かない。

まあ、この手のビジネスは、「好きな人が需要と供給を満たし合っているならいいんじゃね?」という程度の認識です。

しかし、これがもう少し踏み込んで「学力を上げるためには、〇〇をするべきだ」だとか「学力の高い〇〇は〇〇をしているから、義務教育では〇〇せよ」というような議論になってくると途端に怪しくなるように感じる。

素朴なアンケートはエビデンスと言えるの?

たとえば、少し前の記事だが次のような記事をはてなブックマークで見つけた。

news.mynavi.jp

タイトルがはっきりと「パソコンで子どもの学力が上がる」と言っているところがすごい。いや、厳密には「つながる」という言い方がぼかしているのだけど(笑)それでも、見出しを見た人が「パソコンを持たせれば学力がつくのか」と思うのは無理はないでしょう。ついでにいうと、本文の一行目でも「学力アップとの相関性が明らかになった」とまで断言している。

ここまでであれば、「まあ、必死になるからしょうがないよね」という位の目で見ていられるのだけれども、ここから発展して「学力を上げるためにパソコンを持たせろ!」という主張になってくると怪しいことになってくる。

以前に、ICT教育の効果について殴り書きしたことがあり、そこでも書いたのだけど、「簡単には結論付けできないよね」と感じている。 

www.s-locarno.com

この記事でも紹介した「ICTを活用した教育の推進に資する実証事業「ICTを活用した教育の推進に資する実証事業 報告書」」(http://jouhouka.mext.go.jp/school/ict_substantiation/)でも、「効果」の検証には、かなり周到に設定を行っているし、断言までは行っていない。

本当に、その方法が効果があるのかどうかということについて、簡単なアンケートで測定してみたり、その結果を安易に実践に持ち込んだりするのは、相当に問題があると思わざるを得ない。

なお、この「パソコンを持てば学力が上がるか」という話については、舞田敏彦先生のブログで、上の記事を紹介しながら、OECDの調査に基づいた考察を述べられている。

tmaita77.blogspot.jp

ここでは「親が大卒以上」という統制をいれて、データを検討しても「パソコンの使用開始年齢と学力に相関や因果がありそう?」という結論が紹介されていますが、一方で、この記事に対してこんな反論も書かれています。

hokoxjouhou.blog105.fc2.com

「大卒以上が本当に統制になっているのか」ということや「日本や韓国の順位が説明つかない」ということや「時期尚早ではないか」という指摘は説得力があります。

安易なアンケートで学力を測るのはやめておいたほうがいい

自分は決して統計の専門家でも、エビデンスベースの教育が専門ではないので、あまりグチグチいっても不勉強がばれるだけなので、この辺で筆をおこうと思いますが、結論としては、「あまり安易にアンケートしないほうがいいんじゃない?」ということです。

理由としては、上で紹介してきたような、どうもいい加減な設定での調査の結果に基づいて、どうやって教えていくかということを教育していくことも恐ろしいことであるし、そもそもそのアンケートの効果が疑わしいのに、余計なアンケートに時間を割くのは不経済極まりないだろう(笑)

あ、ちなみに、自分としてはできるだけ数字や調査でちゃんと教育を見られる部分は見ていくべきなんじゃないかなぁとは思っていますよ。たとえば  

アクティブトランジション 働くためのウォーミングアップ

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  • 発売日: 2016/04/15
  • メディア: 単行本(ソフトカバー)
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どんな高校生が大学、社会で成長するのか―「学校と社会をつなぐ調査」からわかった伸びる高校生のタイプ

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  • 作者: 溝上慎一,京都大学高等教育研究開発推進センター,河合塾
  • 出版社/メーカー: 学事出版
  • 発売日: 2015/07/15
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これらの本の中で行われいる調査や結果については、参考にしていたり納得したりしています。

でも、エビデンスベースばかり言いにくい気持ちもある。

たとえば、一番最初で紹介したブログではこんな提案をしている。

こんな実験をしてみるといいだろう。

あるクラスでは,グループワークを中心にして,授業を進める。

あるクラスでは,教師が生徒の意見を引き出しながら,授業を進める。

同じ時間に授業して,同じ時間にテストを行う。課題は,

「授業のテーマである~について,あなたが学んだことは何か」

「授業のテーマである~について,これからあなたが取り組みたいことは何か」

どちらの方が,どのような効果を出やすいことが示せるだろうか。

こういうことを厳密にやるべきかもしれないが、日本の心情的には受け入れられないのかもしれない。

まだまだ、考えることは多いのです。

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