ならずものになろう

少しは教育について話してみたくなりました。書き続けて考え続けてみたい。

ならずものになろう

「好きなことを、とことん学んでいい」プロジェクトベース学習の魅力

昨日の記事でこれからの時代の「よい教育」の一つのあり方に「個別化・協同化・プロジェクト化」という考え方があるという、苫野一徳先生の考えを紹介しました。

www.s-locarno.com

その中でも予告した通り、「プロジェクト」に基づく学びの方法について、少しずつ紹介していこうと思います。

以前の記事でも書いた通り、プロジェクトベース学習(PBL*1)については、個人的に興味があることであるので、じっくりと勉強していきたいと思っています。

今回もその一環ということで、まずは実践例の紹介をしてみたいと思います。

 ルーツはデューイとキルパトリックにある

PBLは昨今のアクティブ・ラーニングが話題になった影響で、にわかに注目されるようになったような印象はありますが、そのルーツはデューイの進歩主義教育を思想的な母体とし、キルパトリックによるプロジェクトメソッドにあると言われる。

つまり、PBLの特徴としては、学習者である子どもの興味関心が重視され、固定化されたカリキュラムに子どもを画一的に指導するような性質のものではないということだ。

たとえば、PBLをカリキュラムの中心に組み込んだ学校である和歌山県の「きのくに子どもの国学園」の基本方針を見ると、このPBLの意図するところが分かりやすい。

www.kinokuni.ac.jp

また、自分が直接、PBLに興味を持つようになったきっかけが、以下のアメリカのミネソタニューカントリースクール(MNCS)で開発されたプロジェクトベース学習だ。 

学びの情熱を呼び覚ますプロジェクト・ベース学習

学びの情熱を呼び覚ますプロジェクト・ベース学習

 

この中で紹介されているMNCS型PBLについては、かなり洗練された方法であるので、また、別の記事で少しずつ紹介していきたい。

実際にこのMNCS型PBLで育った子どもがどのような成長を遂げているのかということについては、以下の本が上の本の続編的な位置づけとして読むことができる。 

 

プロジェクト・ベース学習で育つ子どもたち―日米18人の学びの履歴

プロジェクト・ベース学習で育つ子どもたち―日米18人の学びの履歴

 

 

 子どもの自由にさせてよいのかという反論に対して

このように書くと、「必要なことが身につかないのではないか」、「子どもの好きにやらせていたら中途半端になる」というような反論を必ず受けることになるが、そのような反論に対しては、様々な反論の仕方がありますが、前々回の記事でも書いたリヒテルズ直子先生の言葉を再掲しておきます。 

…まずは知識やスキルを身につけることが何よりも大事なのではないか…(中略)…という反論が生まれることは容易に想像できます。…(中略)…しかし、子どもたちにそれだけを押しつけていくと、つまり「自分の頭で考える」時間を与えずにそれだけを強制していくと 、独創性や思考力が著しく未発達な状態で大人になってしまうことが問題の核心です。『公教育をイチから考えよう』(P.163)

そもそも、子どもの興味関心を重視することが「知識を軽視すること」に直結はしない。苫野先生のいうところの「問いのマジック」というものだろう。本来であれば、「知識を習得すること」も「子どもの関心に基づいて追究すること」もどちらも重要であるのにも関わらず、二者択一に考えることに問題があるだろう。

また、上述のミネソタニューカントリースクールについていえば、チャータースクールと呼ばれる形態の学校であり、子どもたちの学力に対して厳密に成果を上げていることを証明できないと存続することができない。

このことから考えても、上述のように素朴なレベルで「子どもに好き勝手やらせていたら学力が伸びない」というような反論を乗り越えるような工夫はされている*2と言ってよいだろう。

中等教育でのPBLに関して

大学でのPBLはサービス経営系の学部で実施されていることが多いようだが、日本の中等教育でどれほどPBLが行われているかというと、いくつかの学校が総合学習などで扱っている*3程度にとどまり、カリキュラムの核として位置付けられてまではいないようだ。

総合学習について、力を入れて、結果を残している学校といえば、堀川高校は有名であり、そこでは「探究基礎」として一年半をかけて、かなり丁寧に探究型の学習を指導している例がある。この堀川高校の例については、以下の本が参考になる。 

 

アクティブラーニングとしてのPBLと探究的な学習 (アクティブラーニング・シリーズ)

アクティブラーニングとしてのPBLと探究的な学習 (アクティブラーニング・シリーズ)

 

 

本当にPBLを中心に行っている例とすれば、上述の「きのくに子どもの国学園」や長野の「いいずな学園グリーンヒルズ」がある。

教科固有の領域の学習の必要性は否定されない。実際、MNCSでも、基礎学力と必要なものについては、セミナーという形で教授しているものもある。

また、PBLを総合学習で行うことで教科でのAL型授業の必要性が否定もされない*4ことにも注意が必要である。

教科の中でどのようにプロジェクトベース学習ができるのかというところも興味があるところであるし、カリキュラムの中心にプロジェクトベース学習を据えていくような学校が増えてくるのか、今後、興味があるところである。

*1:PBLには、「問題解決学習(Problem-Based Learnig)」と「プロジェクトベース学習(Project-Based Learning)」とがあるが、自分が扱うPBLは基本的には後者のプロジェクトベース学習です。違いについては、記事中で紹介した溝上・成田(2016)を参照。

*2:厳密にいうと、知識のとらえ方や学力のとらえ方自体に違いがあるといった方がよい。ただ、たとえば、MNCSの卒業プロジェクトの要件を眺めてみると分かるが、非常に、細かく高度なことが要求されていることからもわかるように、普通の学力観からみてもかなりの程度が達成されているように思う。

*3:たとえば、日本PBL研究所主催の「PBLフェスタ」に参加する学校はかなり力をいれて探究型の学習をやっていると分かる。

*4:詳しくは溝上・成田(2016)参照

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