ならずものになろう

少しは教育について話してみたくなりました。書き続けて考え続けてみたい。

ならずものになろう

教育とICTについて今思うこと

学会があったり指導要領改訂の話があったりしたため、話題に挙げることができなかったのですが、先月末に「2020年代に向けた教育の情報化に関する懇談会」最終まとめが出されています。

明日からまた別のことをやることになるので、時間がある今日のうちに読んで気になったことをまとめておこうかと思います。

必要性はどこから出てきているか

アクティブ・ラーニングの導入を明確化した学習指導要領の改訂と同時進行で進んでいるのが教育のICT化です。同時に進んでいる話だけあって、必要性の議論の立脚点はアクティブ・ラーニングと同じところにある。

すなわち、「グローバル化や急速な情報化など社会の変化が激しく、将来の変化を予測することが困難な時代」(「最終まとめ」P.4)に対する対応が必要であるという。

そのような時代において、ICTの活用は授業・学習面に加え、校務面でも効果的に学校を支援することが目的だという。具体的な項目としては、以下のようなものを挙げている。

  •  これからの社会において必要となる,主体的・対話的で深い学びという「アクティブ・ラーニング」の視点からの授業改善や,個に応じた学習の充実
  • 情報モラルを含む情報活用能力の育成
  • エビデンスに基づいた学校・学級経営の推進
  • 教員一人一人が力を最大限発揮でき,子供と向き合う時間を確保できる環境の整備

つい、教員の立場からすると「アクティブ・ラーニング」や「情報モラル」のような授業のためのICTという点に目が行きがちである。実際、自分もそのような観点から記事を前に書いている。

後半の2点についても十分に理解をしていきたいところである。

ICTの強みを活かした指導の方法は?

教科の中での活用の方法やICTの特徴はさんざんいろいろなところで言っているし、今後、自分が授業を実践していく中でも説明することになるので、「最終まとめ」から抜き出したりはしない*1

「効果的なICT活用の在り方」(PP.9-10)について、授業以外の面から個人的に注目した点を挙げる。

(1)学習記録の蓄積・分析が分かりやすく「見える化」されるということ

 上記のICT化の目的の中でも「エビデンスに基づいた」という部分にあたる内容だろう。やはり記録の蓄積やその記録を分かりやすく図表にするなどについては、ICTは非常に効果的だろう。

現状でも、エクセルやAccessなどで成績の管理を行うなどの工夫は見られるが、決して誰しもが簡単に使えるというものではないし、使えない人はパソコンは入力にさえ拒絶するという不毛なやりとりを見ているだけに、いっそICTが当たり前となってもらいたいという個人的な恨みつらみが…(笑)

セキュリティの問題はあるのだろうが、こうしたデータなどを保護者にもWebを通じて報告できるようになればいいなぁなどと思ったりもします。

また、この学習記録の「見える化」ということについて言えば、最近は産業界がかなり力を入れて、このあたりのシステムの構築に力を入れている。

classi.jp

surala.jp

これらのサービスは生徒がテストでどのような問題を間違ったかという記録をするのはもちろん、「学習動画の視聴時間」や「成績推移」なども一覧にする機能を備えている。ついでにいうと、苦手な問題を選んだ出題してくれるという機能までついている。ここまでくると、ぼんくらしている教員に習うよりも、自分でタブレットで勉強した方が話が早いと言われる日も、そう遠くないのだろうと思う。

まあ、こういうサービスを使おうという話ではなく、今まで見えなかったことが「見える化」されると気づきが多いよなぁという話です。

進路指導にしても普段のアドバイスにしても生徒との口頭でのやり取りや普段の学習の様子というあいまいなもので話していることが、データを示しながら話せることには魅力があります。

(2)授業以外の作業を減らすことができる…?できるといいなぁ…。

とにかく学校という現場は書類が多い。ペーパレス化できることをペーパレスにするだけでも、かなりの時間と労力の削減ができるんじゃなかろうかと。

また、上の内容とも重複するが、生徒の情報を効率的に蓄積できれば、学年間の引継ぎや担当同士の引継ぎをかなりスムーズに行えるのではないかと思うのです。

酷い話でありますが、異動した先生から引継ぎをしたくても引継ぎができないなんてことは少なくない話です。そんなときに、せめて成績のデータなどが一覧できるようになっていれば、ずいぶん、引継ぎも楽なんじゃないかと思うのです。

笑えない笑い話にはなりますが、子どもが手紙を出さない、提出物を出さないから親と連絡がつかないなんてこともあるので、紙に頼ったやり取りが減ってくれるとそいういういらぬ労力が減るよなぁと。

(3)特別支援におけるICTの可能性

上記までの内容については、今の自分にとって便利だろうなという話ですが、この「特別支援」についてのICTの可能性は、本来、一番目を向けるべきことなのだろうと思います。

ICTの強みが「一人一人の学習ニーズや個性な等に応じ」(P.9)ることができることにある。だからこそ、生徒の状態や特性に応じて、ICT環境をカスタマイズすることで今までできなかった指導を行える可能性がある。

具体的な内容について踏み込んで論じるだけの勇気は自分にはない。それは勉強不足だからだ。簡単に「ユニバーサルデザインの授業ができる」などと言ってしまうのは恐ろしい。

ただ、教室という場所がICTによって、もっと柔軟に、自由に学習できる場所になることを期待したい。

一方で、そのように学習が個別化していくときに、なぜ、教室に40人でそろって勉強するのだろうかということも、問われなければならないのだろう。

色々と先走っているのですが…

正直、ICT化に関する議論については、結論ありきで先走っている感じは否めない部分はある。たとえば「一人一台タブレット」などのお題目は、ゆくゆくは必要なのかもしれないが、現状の学校の教員の資質や教室環境を考えると、拙速な感じは否めない。そもそもタブレットである必要は無い。

また、現状のエクセルやワードすら使えない(一般企業で許されるのか、これ?)人員が少なからずいることを考えると、道具があっても使われないのかもしれない…という予測が簡単に立ってしまうのも問題だ。研修が必要といったって、ただでさえ時間がない。時間を作るためのICTなのに、研修に莫大な時間をかけては本末転倒だ。

ただ、それでも、ICTでやれることの魅力は多い。個人的には、ICTでやってみたいことは数多くある。それだけに、拙速にならないようにしたいところだ。

 

*1:気になる場合は「最終まとめ」のPP.9-10やPP.21-27を参照してもらえるとよいかと思う

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